みやの/（20）

僕はベンチに腰掛け、彼女を待っていた。彼女はいつも遅れてくる。まるで、僕を試しているかのように。

彼女は、濃い緑色のワンピースを身に纏い、ゆっくりと歩いてきた。その姿は、まるで絵画から抜け出してきたかのようだった。長い黒髪が風に揺れ、白い肌が夕日に照らされて輝いている。豊かな胸元と、細い腰、そして丸みを帯びた臀部。その完璧なまでの曲線美は、僕の心を激しく揺さぶる。

「お待たせ。」

彼女は、そう言って僕の隣に腰掛けた。その声は、鈴の音のように澄んでいて、どこか物憂げだった。

「いいえ、僕も今来たところですよ。」

僕は平静を装って答えたが、内心はドキドキしていた。彼女の近くにいると、僕はいつも緊張してしまう。彼女は、まるで妖精のような存在で、僕のような凡人には理解できない何かを持っているように思えた。

「この街も、ずいぶんと秋めいてきましたね。」

僕は、ありふれた言葉を口にした。彼女と何を話せばいいのか、わからなかったのだ。

「ええ。秋は、なんだか物悲しい季節ですね。まるで、私の心のよう。」

彼女は、遠くを見つめながら言った。その瞳は、深い悲しみを湛えているようだった。

「あなたは、いつも悲しそうですね。」

僕は、思わずそう言ってしまった。

「そうかしら？ 私は、ただ、少し疲れているだけよ。」

彼女は、微笑んでみせた。その笑顔は、どこか儚げで、僕の心を締め付ける。

「あなたは、いつも何を考えているんですか？」

僕は、彼女のことをもっと知りたいと思った。

「何も考えていないわ。ただ、生きているだけ。」

彼女は、虚ろな目で答えた。

彼女の言葉は、いつも謎めいている。まるで、深い霧の中にいるようで、僕は彼女の本心を見抜くことができない。

彼女は、掴めそうで掴めない。まるで、ガラス細工のように繊細で、壊れてしまいそうで怖い。

僕は、彼女のことをもっと知りたいと思う反面、彼女の世界を壊してしまうのではないかと恐れている。

彼女は、僕にとって、永遠に謎めいた存在なのだろうか。

秋の夕暮れは、静かに深まり、二人の間には、言葉にならない沈黙が流れていた。